大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所松江支部 昭和56年(ラ)1号 決定

抗告人 小田弘

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、抗告人提出の別紙書面記載のとおりである。

所論は、その趣旨が必ずしも明確ではないが、要するに、(一)抗告人が調停期日に出席しなかつたのは、裁判所の公平な調停を期待できなかつた、(二)昭和五六年一月一三日の調停期日の呼出状には、出頭すべき月日を一月一二日と記入されていた、というのであると思われる。

そこで、まず、記録によれば、次の各事実を認めることができる。(一)松江家庭裁判所益田支部昭和五五年(家イ)第五五号離婚等調停申立事件(申立人小田志津子、相手方抗告人)の第一回調停期日が昭和五五年一二月九日開かれたが、抗告人は出頭しなかつたこと(これについて、抗告人から何らかの届け出があつたという形跡は認められない。)、(二)そこで、調停委員会は次回調停期日を同月二三日午前一〇時と定め、その呼出状は同月九日抗告人宛送達され(同居人小田節子受領)、抗告人は、同月一七日同支部宛電話で、同期日には仕事が忙しく出頭できない旨届け出て、同期日にも出頭しなかつたこと、(三)調停委員会は、第三回調停期日を翌年一月一三日午前一〇時と定め、昭和五五年一二月二四日その呼出状と陳述書提出催告書が抗告人宛送達され(抗告人本人受領)、抗告人は、出頭できない理由として、「志津子は出産前で精神面と肉体的にも不安定なときである。本人は離婚調停にかけておきながら、私の家から結婚どきの荷物を、父親といつしよに二回に分けて持出すなど、話し合いの前提となる冷静な行動が見られない。」と記入した、昭和五六年一月九日付陳述書、○○土木建築事務所長津島潔作成の同月八日付証明書を提出したこと、(四)抗告人は、更に、その後、「調停委員会から(家イ)第五五号により一月一三日松江家裁益田支部に出頭するよう書類を受取つています。先日同支部○○家事審判官宛に出頭できない理由を提出しており、同日は私と父悟も出頭しません。よろしくお願いします。」と記載した同月九日付書面を提出し、同月一三日の第三回調停期日にも出頭しなかつたこと、(五)抗告人は、右期日に出頭しなかつた理由について、同月一九日付陳述書を提出したが、同陳述書でその理由を「・・・・・・・・・一月九日郵便書留で家裁益田支部○○家事審判官宛に陳述書を提出しており、今回も同じ内容につき前回文を熟読されれば御理解できると思います。」としていたこと、(六)調停委員会は、更に第四回調停期日を同月二七日午前一〇時と定めたが、抗告人は同期日にも出頭せず(同期日についても、抗告人から何らかの連絡があつた形跡は認められない。)、右調停申立事件は成立する見込みがないと認められて終了したこと。

以上の事実に徴すると、抗告人が昭和五六年一月一三日の右第三回調停期日に出頭しなかつたことについて、正当な事由があつたとは認められない。抗告の理由(一)については記録を精査しても、裁判所あるいは調停委員会が不公平な調停をするおそれがあると疑わしめる事情があることを窺うことはできない。また、抗告の理由(二)については、仮に所論のとおり呼出状に誤記があつたとしても、抗告人は、その期日前に、前記(四)認定のとおり、正確な期日を知つていたのであるから、右誤記が原審判に対して何らの影響も及ぼさないというべきである。

以上のとおり、抗告人には、昭和五六年一月一三日第三回調停期日に出頭できない正当事由があつたとは認められないから、抗告人を過料二万円に処した原審判は相当であつて、記録を精査しても、原審判にはこれを取消さなければならないようなかしがあるとは考えられない。抗告人の主張は理由がない。

よつて、本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤原吉備彦 裁判官 萩原昌三郎 安倉孝弘)

別紙書面〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例